企業がシステムを導入する際、多くの場合は、候補となる複数のシステムベンダーから提案を受け、1社を選定します。各社の提案を基に比較検討する時には、どのようなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。選定基準となる評価項目とあわせて解説します。
システムベンダーの提案を評価するにあたって行うべきこと
複数のシステムベンダーを比較検討するにあたり、あらかじめ選定基準となる評価項目を定めておくことが有効です。なぜなら、自社のシステム導入プロジェクトに合ったベンダーを選ぶには、価格のみに偏ることなく、客観的かつ総合的に比較検討を行うことが不可欠だからです。具体的には、以下のような評価項目が考えられます。
・システムに関する評価項目:業務への理解度、業務改善の提案力、要求した機能の網羅性・実現性、システムの操作性、将来的な提案など
・プロジェクト管理に関する評価項目:スケジュール・計画の妥当性、SE体制の充実度、イニシャルコスト・ランニングコストの妥当性など
・企業に関する評価項目:財務状況、同業他社への導入実績など
・全体的な印象に関する評価項目:プレゼンテーションの様子、コミュニケーションの取りやすさなど
評価項目は、プロジェクトに合う1社を選定するために必要だと思われる項目を組み合わせて設定します。場合に応じて、重要な項目に重み付けをすると良いでしょう。客観性を期すべく、通常は複数名で採点します。
評価の定量化は、経営層、関係部門の責任者をはじめとするステークホルダーの合意形成を図る上でも役立つはずです。
ベンダーの提案を評価する際のポイント
次に、各システムベンダーの評価を進める中でチェックしておくべき具体的なポイントをご紹介します。
1.担当者から見て納得感のある提案になっているか
システムベンダーから提出された提案書について、少なくとも、事前の打ち合わせで話した内容やRFPで提示した要望が反映されているかどうかをしっかりと確認しておきましょう。どれほど専門性の高い内容であったとしても、自社のプロジェクトに合った提案でなければ、後になって目的の未達成や予算オーバーといった事態を招くおそれもあります。
また、いかに良い提案であったとしても、実現不可能な内容では意味がありません。対応が不可能な要望に関しては「できません」と率直な回答が返ってきているかどうかも、システムベンダーの信頼性を測る上で重要な点です。
2.安かろう悪かろうを避けるためにも価格のみで決定しない
システムベンダーの比較検討では、どうしても安い価格を提示する企業に目がいきがちではないでしょうか。しかし、安価なシステム開発にはそれなりの理由があるものです。低価格だけを理由に選定した場合、後々になって技術力・人員不足を原因とする計画の遅延、クオリティ不足などが発生するリスクもあります。
そのような事態を避けるためにも、価格のみを見るのではなく、その提案の費用対効果を十分に検討することが大切です。具体的には、低価格の理由を尋ね、その価格を実現できるだけの納得のいく根拠があるかどうかを確かめてみると良いでしょう。
3.技術面とユーザー視点で4:6ぐらいの説明が理想的
良い提案書を見極めるためのポイントとして、技術に関する内容とユーザー視点の内容が両方ともバランスよく組み込まれていることが挙げられます。
新しい技術の習得に力を注ぎ、経験が蓄積されたシステムベンダーほど、実際に使う人の目線を大切にした顧客満足度を高める提案が可能です。一方で、ユーザー視点の話ばかりが盛り込まれ、専門知識が必要となる技術的な話があまりないのも、不安要素となり得ます。システム開発の知見を持たない担当者が、現場の実情を知らないまま提案を行っている可能性もあるからです。
技術的な情報が薄い提案書には、次のような特徴があります。
- 資料や説明に専門用語が少ない
- 分かりやすい解釈や説明がなされていない
- インターネットでコピペしたと疑われる文章がある
- 英文から自動翻訳されたような違和感のある文章が多い
- 技術力を持たない人が書いたと思われる文章で説明されている
細かい部分ではありますが、信頼できるシステムベンダーを選ぶ上でも重要なポイントです。
4.「できます」ばかり言うベンダーには要注意
システムベンダーからの要望への対応可否は、根拠を基に説明されているかをチェックしておきましょう。
ベンダー側は当然ながら契約の締結を目指しており、提案書はおおむね自社が提示した要望を満たす内容で返ってきます。つまり基本的には「できます」という回答ばかりになっているはずです。
しかし、ここでシステムベンダーが言うことを信じ過ぎるのは、おすすめできません。自社で情報収集を行った上で、ベンダー側に回答の根拠や実例等を示してもらい、信頼して任せられるかどうかを判断するようにしましょう。
選定基準を定めてシステムベンダーを客観的に評価しよう
システムベンダーの選定は、システム導入を成功へと導く重要なプロセスです。価格以外の要素も含めた総合的な判断をするためにも、各ベンダーの提案に対する評価は選定基準を定めた上で行うようにしましょう。
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